「繰上げ」と「繰下げ」はどちらがお得か~医療・介護保険料の観点から~

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こんにちは〜🌤️おりおりです🙋‍♀️

年金の手取り額

年金の繰上げと繰下げ、どちらがお得か、というのは度々議論されている話題です。

繰下げに関しては、(繰下げ後の)受給開始年齢+12年以上生きたらお得になる(プラス12年の法則)、というのが有名ですが、これはあくまで額面上での話です。

年金であっても通常の所得(給与所得や事業所得など)と同じく、税金や社会保険料が発生します。

ただし、年金受給開始後は社会保険料と言っても年金保険料はありませんから、医療保険(75歳未満は国民健康保険や健康保険など、75歳以上は後期高齢者医療制度)と介護保険(65歳未満は第2号、65歳以上は第1号被保険者)の保険料となります。

これらの負担額は(年間の受給額が18万円以上なら)原則、年金から源泉徴収(特別徴収)されることになっているため、あまり意識されませんが、手取り額に大きく影響します。

介護保険料、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、住民税の各種保険料(税)は、お住まいの市区町村からの依頼に基づき年金から特別徴収しています。
年金からの各種保険料(税)の特別徴収には、年金の種類や年金額など一定の条件があります。年金から各種保険料(税)が特別徴収される条件等については、年金Q&A「年金からの介護保険料などの徴収」をご覧ください。
なお、年金から各種保険料(税)が特別徴収される方には、市区町村よりお知らせを行っています。

年金からの介護保険料、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、住民税の特別徴収|日本年金機構

税金こそ、最低でも公的年金等控除(65歳以上は110万円~)と基礎控除(所得税48万円・住民税43万円)と社会保険料控除、人によっては配偶者控除や医療費控除などもあるため、金額は小さいと思いますが、

医療・介護保険料は原則、これらの控除が効かないため、負担は馬鹿になりません。

これらの保険は年齢的にお世話になる側になるので、瞬間的に切り取って損得で言うと得になる(払った保険料よりも軽減された金額の方が大きくなる)場合が多いでしょうが、

現役時代には割に合わない保険料を払い続けてきたわけですから、減らせるなら減らしたいところです。

そこで登場するのが、年金の「繰上げ受給 or 繰下げ受給」というわけです。

年金の受給額が変わると、医療・介護保険料も変わる、というわけね

固定額を減らすには

ですが、繰上げ受給をしたら受給額が減るから、医療・介護保険料も少なくて済む、といった単純な話ではありません。

もちろん、(年金も含めた)所得に応じて保険料も増減するのですが、それ以外にも所得によらず固定となっている部分もあり、これらに対する減免制度も存在するからです。

国民健康保険には平等割(1世帯あたり)と均等割(1人あたり)、またこれらの7割、5割または2割を減額する制度(軽減措置)があるのは有名ですが、

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後期高齢者医療制度も同様になっています(こちらは世帯単位ではなく、個人単位での加入なので平等割はありません)。

保険料 = 均等割額 + 所得割額

大阪府後期高齢者医療広域連合では、

令和4年度・令和5年度は
・均等割額は、54,461円(年額)です。
・所得割額は、次のように計算します。
所得割額 = 賦課のもととなる所得金額※ × 11.12%(所得割率)
・保険料の賦課限度額は、66万円(年額)です。

(中略)

主な「基礎控除後の総所得金額等」の計算方法

1.給与所得の場合
 (給与収入金額-給与所得控除額)-基礎控除額(43万円)(注1)

2.公的年金所得の場合
 (年金収入金額-公的年金等控除額)-基礎控除額(43万円)(注1)

3.その他の所得の場合
 (収入金額-必要経費)-基礎控除額(43万円)(注1)

※複数所得がある場合、基礎控除額の適用は一度のみとなります。

(注1) 前年の合計所得金額が2,400万円以下の場合。

大阪市:後期高齢者医療制度 (…>国民健康保険>後期高齢者医療制度)

ちなみに、こういった例でよく大阪市が使われるのは、サイトが見やすいのもありますが、東京都は区ごとに違うからです(後期高齢者医療制度は都道府県ごとですが)。

上記のページにもありますが、注意点は軽減措置の判定には公的年金等控除額が含まれない、かつ(個人単位のはずなのに)なぜか世帯全体の所得で判定になっている、ということです。

具体的には世帯の所得がこれ以下でなくてはなりません。

  • 7割軽減:43万円 + 10万円 ×(給与所得者等の数 – 1)
  • 5割軽減:43万円 + 29万円 ×(被保険者数)+ 10万円 ×(給与所得者等の数 – 1)
  • 2割軽減:43万円 + 53.5万円 ×(被保険者数)+ 10万円 ×(給与所得者等の数 – 1)

例えば、夫婦二人世帯でどちらも年金のみである場合、2割軽減でも二人で150万円以下、7割軽減はなんと43万円以下ということで、ほぼ不可能となります。
令和5年度の年金額は国民年金(老齢基礎年金(満額))のみでも 79.5万円 なので)

となると、繰上げ受給して年金額を減らしても固定の部分は変わらないので、むしろ繰下げ受給をして所得ゼロの期間を作った方がトータルで払う保険料は少なくなるのでは?という疑問が浮かびます。

今後、少子高齢化による財源不足で条件がさらに厳しくなったとしても、所得が完全にゼロならまず対象に入れる、という安心感もあるね

意外な結果に

では、実際にシミュレーションしてみましょう。

こちらの、夫婦2人分の標準的な年金額(224,482円)-国民年金(66,250円)= 158,232円(月額)を基準に、分かりやすいように単身者で年額190万円、かつ繰上げ・繰下げは国民年金・厚生年金とも行うとします。

まず、繰上げも繰下げもしなかった(65歳から受給開始した)場合ですが、75歳までの国民健康保険料は大阪市の例ではこうなります。

40,815円 + 41,457円 × 1 +(190万円 – 43万円 – 110万円)× 11.87% = 126,191円
(平等割)+ (均等割) + (所得割)

次に、75歳以上の後期高齢者医療保険料はこうなります。

54,461円 +(190万円 – 43万円 – 110万円)× 11.12% = 95,605円
(均等割) + (所得割)

また、60歳に繰上げ受給をした場合、190 × 0.76 = 144.4万円、70歳に繰下げ受給をした場合は 190 × 1.42 = 269.8万円、75歳は 190 × 1.84 = 349.6万円 となり、所得割が変わり、

受給開始までの間は平等割と均等割も7割軽減になるため、それも考慮するとこうなります。

60~64歳65~69歳70~74歳75歳以上60~84歳の合計
繰上げ(60歳)127,141円82,272円82,272円54,461円2,003,035円
なし(65歳)24,682円126,191円126,191円95,605円2,341,370円
繰下げ(70歳)24,682円24,682円220,914円184,343円3,194,820円
繰下げ(75歳)24,682円24,682円24,682円267,631円3,046,540円

84歳までというのは平均寿命を考えると妥当な想定だと思うのですが、結果は意外でした。

繰下げで前半部分の変動額(所得割)だけでなく、固定額(平等割と均等割)も7割軽減に出来るのですが、それを加味しても年金受給開始後の保険料が増えるデメリットの方が大きいようです。

さらに、これらの医療保険料に加えて介護保険料(65歳以上は第1号被保険者)も掛かるのですが、これも所得に応じて割合(0.35~2.30倍)が変わるようになっている(均等割のような要素は無い)ため、もっと差は開くと思われます。

どちらが得かはともかく、ここまで差が開くとは思わなかったわ

年金額84%アップ=所得84%アップ、ではない

ちょっと何言ってるか分からない状態ですが、この現象の正体は控除にあります。

先ほどの計算式のとおり、所得割を計算するのに、基礎控除(43万円)と公的年金等控除(65歳以上は110万円(こちらのように330万円を超えると増えていく))が適用されます。

例えば、もともとの年金が 200万円 だとしたら、所得割の計算上の所得は 47万円 です。

これを最大(75歳)まで繰下げると年金額は84%アップ(200 × 1.84 = 368万円)ですが、所得割の計算上の所得は 205.5万円、繰下げしなかった場合の所得の 205.5 / 47 = 4.3723… つまり約337%アップなのです。

逆に最大(60歳)まで繰上げると年金額は24%ダウン(200 × 0.76 = 152万円)ですが、所得割の計算上の所得はなんと 0円、つまり100%ダウンです。

もちろん、固定部分(平等割と均等割)があるので保険料がゼロになるわけではありません(減免の条件には公的年金等控除は適用されないので減免も不可です)が、決して少なくない変動部分(所得割)に関わってくるので、この影響は大きいと思います。

しかも、今回は保険料のお話でしたが、(保険料を考慮しない)額面上でも、運用を考えると繰上げ受給の方がはるかにお得です。

年金の「繰上げ」vs「繰下げ」~運用も含めた本当の損益分岐点~

それでも100歳以上まで生きたら分かりませんが、そうなると今度は保険料負担の差(繰下げの方が不利)が広がるため、トータルすると損益分岐点なんて無い(120歳だろうが130歳だろうが繰上げの方が得)かも知れません。

とはいうものの、あくまで年金「保険」ですから、損得で考えるのではなく、ボケても確実に貰える(証券会社の定期売却サービスよりも確実)という安心をお金で買う、という考え方もアリかと思います。

定期売却サービスの場合、自分で設定を変えられるし、その気になれば使い込むことも出来ちゃうからね

それでは皆様、よきフィットネスライフを〜🏃‍♀️

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