繰下げみなし増額制度について~年金の繰下げ受給がお得に~

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こんにちは〜🌤️おりおりです🙋‍♀️

年金の一括受給について

人知れず、2023年4月から「(特例的な)繰下げみなし増額制度」という制度が始まりました。

これはひと言でいうと、年金の一括受給が、これまではかなり不利(損)な条件だったのが改善される、というものです。

まず、年金の一括受給なんて出来るの?という疑問ですが、これはあくまで年金を「繰下げ受給」した後に、希望すれば(本来)65歳以降受け取れるはずだった年金を一括で受け取れる、というもので、

iDeCoの一時金受け取りのように、先払いで受け取れるというものではありません。
(そもそも公的年金は「賦課方式(ふかほうしき)=自分の為の積み立ててではなく、今払っている保険料は現在の高齢者に渡っている」ため、引き出せる物ではない)

年金制度改正について~納付期間5年延長~

それでも、65歳以降も労働や貯蓄などで生活出来ていても、体調の変化などで、入院費や施設への入所費用で急にお金が必要になることはあるでしょうから、有難い制度です。

繰下げ受給については過去に何度か取り上げているため、詳細は割愛しますが、

老齢基礎(厚生)年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳まで※の間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができます。繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げすることができます。

年金の繰下げ受給|日本年金機構

年金の受給開始年齢を繰り下げることでその期間に応じて(最大で10年=84%)受給額が増える、というものです。

これとは逆に、繰上げ受給もあり、これが実質的に先払いで受け取る唯一の方法と言っていいでしょう。
(ただし、一括受給のように後から変更することは出来ません)

老齢基礎・厚生年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができます。ただし、繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。
なお、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求をする必要があります。

年金の繰上げ受給|日本年金機構

繰下げは老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)を別々に出来るけど、繰上げは同時じゃないとダメなのね

損益分岐点の考え方

年金の繰上げ・繰下げとなるとよく出てくるのが損益分岐点(何歳まで生きたらお得になるか)です。

(増額・減額した)受給額は一生続くため、早くに亡くなった場合は繰上げ受給が、長生きした場合は繰下げ受給が有利なのは想像がつきますが、それが具体的に何歳なのか、です。

この損益分岐点は誰でも(貰える年金額に関わらず)同じで、繰下げであれば上のリンクにあるように増額率は1ヶ月あたり0.7%(1年あたり8.4%)ですから、1年間で本来貰える年金を100とすると、

65歳からスタートした場合は毎年100、66歳からスタートした場合は毎年108.4となり、後者から見た場合、スタート(66歳)時点のビハインド100を、毎年8.4ずつ縮めていくことになるため、

100 / 8.4 = 約11.9年、つまり(66歳から)11年以内なら前者が、12年以上なら後者が有利というわけです。

これが5年の場合はビハインド500を毎年42ずつ縮めるため 500 / 42 = 約11.9年、10年の場合は同様に 1000 / 84 = 約11.9年と、どの場合も実は同じになります。

つまり、どの年齢に繰下げようとも、(繰下げ後の)受給開始年齢+12年以上生きたらお得、ということになります。
(これを「プラス12年の法則」と言ったりします)

逆に繰上げ受給の場合、減額率は1ヶ月あたり0.4%(1年あたり4.8%)ですから、65歳からスタートした場合を毎年100とすると、64歳からスタートした場合は 100 /(1 – 0.048)= 95.2 となり、その差4.8ずつ縮めていくことになるため、

95.2 / 4.8 = 約19.8年、つまり(65歳から)19年以内なら後者が、20年以上なら前者が有利、というわけです。

これが5年の場合は 76 × 5 / 24 = 約15.8年 ですから、こちらは繰上げとは違って「〇〇の法則」みたいに年数が固定されるわけではなく、65歳に向かってゆるやかに損益分岐点が下がっていくイメージです。
(65歳を下回ることはありえないため、当たり前と言えば当たり前ですが)

繰上げよりも繰下げの方が計算が簡単なんだね

不利だった一括受給

さて、本題の一括受給ですが、65歳を過ぎても年金請求書を提出せずに受給開始を繰り下げている場合、(本来受け取れるはずだった年金を)さかのぼって受け取ることが出来る制度があり、これが一括受給の正体です。

この時、さかのぼって受け取れるのは5年間までになります(5年で年金の受給権が時効になる)。

つまり、例えば72歳で請求した場合、67歳~72歳までの分は受け取れるのですが、65歳~66歳の分は受け取れない、ということになります。

さらに、さかのぼって受け取ることを選択した時点で、繰下げ受給していないことになり、繰下げの増額が無効になってしまっていたのです。

これは、さかのぼって(一括受給で)受け取る額も、それ以降に継続的に受け取れる額も、です。

これではあまりに不利になってしまうため、(65~66歳の分は受け取れないのだから)67歳開始の増額率(16.8%)で計算しよう、というのが今回の制度改正です。

令和5年4月から70歳以降も安心して繰下げ待機を選択することができるよう制度改正が行われ、70歳到達後に繰下げ申出をせずにさかのぼって本来の年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができます。これを「特例的な繰下げみなし増額制度」といいます。

令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました|日本年金機構

5年前(72歳で請求する場合は67歳)に繰下げしたと「みなして」増額するため、「繰下げみなし増額制度」という名前になっているようです。

この制度によって、理論上は一括受給しても損はしない(トータルで受け取れる額は同じ)、ということになりました。

時効で消滅していた分が増額という形で補填されるわけだね

改正後も残るデメリット

ただし、要注意なのが「税金」です。

年金であっても例外ではなく、所得である以上、税金が発生します。

年金を一括受給した場合、(普通に考えれば)まとめてその年の所得になりそうなのですが、「年金を受け取っていた」という扱いになり、修正申告を行って各年分の税金を納めなければならないそうです。

さらにこの時、(わずかですが)延滞税も発生します。
(損得以上に、老後にこの申告を自分ですることを考えると、かなりの負担でしょう)

年金を扱う厚生労働省と税金を扱う国税庁(財務省)の縦割りというか、税金を取る側からしたら本来取れる見込みの税金が遅れたのだからその補填という事なのでしょうけど、制度の意図を考えたら何とかして欲しい所です。
(運用期間を延ばせる、と考えたら繰下げ受給してもらった方が国も得だと思うのですが)

とは言え、(細かい損得や手間は抜きにして)繰下げ受給しても、もし急にお金が必要になった場合は一括受給が可能、ということは頭の片隅に置いておくと良いかと思います。

将来のことを考えなくて済む分、繰下げ受給のハードルが下がるわね

それでは皆様、よきフィットネスライフを〜🏃‍♀️

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