こんにちは〜🌤️おりおりです🙋♀️
小規模企業共済の借入を投資に回す、は間違い
iDeCoと同じく、掛金を全額所得控除できる制度として、小規模企業共済があります。
ただし、こちらはiDeCoとは違って自分で投資商品を選ぶことはできず、予定利率は現在1.0%(しかも複利ではない)となっており、iDeCoの次点(iDeCoを限度額まで拠出する前提で、さらに節税したい場合のみ拠出する)とされることが多いです。
しかし、そのデメリットを解消する方法として、貸付制度を利用し、借り入れたお金を(NISAや特定口座などで)投資に回せば、結果的にiDeCoと同じ所得控除付きの少額投資非課税制度になる、というものがあります。
(一般貸付(使途自由)でも利回りは年1.5%なので、それ以上ならお得になる)
ですが、これは厳密には違います。
なぜなら、小規模企業共済(+借入)のメリットを考える上では、小規模企業共済をやらない場合と比較する必要があり、後者の場合は掛金は発生しないはずですから、借入で得たお金は(翌年以降の)掛金に充てる、と考えるべきです。
(iDeCoの場合、NISAや特定口座に積み立てるのと比較になります)
増額借換(借増し)を利用する
とは言え、借入である以上、いつかは返済する必要があります。
| 借入期間 | 100万円以下 | 6か月/12か月 |
| 105万円~300万円 | 6か月/12か月/24か月 | |
| 305万円~500万円 | 6か月/12か月/24か月/36か月 | |
| 505万円以上 | 6か月/12か月/24か月/36か月/60か月 | |
| 返済(償還)方法 | 借入期間が6か月または12か月の場合 : 期限一括償還 借入期間が24か月、36か月、60か月の場合 : 6か月毎の元金均等割賦償還 | |
ですが、この借入期間が6か月または12か月の場合、「増額借換(借増し)」という手続き方法があります。
現在、500万円の借入れをしている共済契約者が、増額借換(500万円→700万円)をする場合
⇒500万円を全額返済する手続きと、700万円を新たに借り入れる手続きを同時に行います。増額借換(借増し) | 小規模企業共済
たとえば、借入期間が12カ月で毎年、借入限度額(掛金総額の7~9割)まで増額借換すれば、(これまでの借入は延長しつつ)前年払った掛金の7~9割を新たに借入することができます。
そして、最後に解約する(共済金を受け取る)時に、相殺することができます。
現在、貸付けを受けています。解約した場合、貸付金はどうなりますか。
解約時に借入金の未返済分がある場合、共済金(解約手当金)はその額を差し引いて支給されます。
よくあるご質問|小規模企業共済
つまり、2年目以降の手出しは実質、拠出額の1~3割で済む、というわけです。
しかも、このお金は最後に共済金と借入金の差額として返ってくるんだね
NISAやiDeCoが足元にも及ばない神制度
そう考えると、小規模企業共済(+借入)は、拠出額の1~3割の手出しで、拠出額ぶんの所得控除が得られる、ということになります。
これがどれほど凄いことかは、これを見ればわかるでしょう。
| 課税所得 | 税率 | 節税効果 月7万円の場合 | 利回り 7割(25.2万円) | 利回り 8割(16.8万円) | 利回り 9割(8.4万円) |
|---|---|---|---|---|---|
| ~195万円 | 15% | 12.6万円 | 50.0% | 75.0% | 150.0% |
| ~330万円 | 20% | 16.8万円 | 66.7% | 100.0% | 200.0% |
| ~695万円 | 30% | 25.2万円 | 100.0% | 150.0% | 300.0% |
| ~900万円 | 33% | 27.7万円 | 110.0% | 165.0% | 330.0% |
| ~1800万円 | 43% | 36.1万円 | 143.3% | 215.0% | 430.0% |
| ~4000万円 | 50% | 42.0万円 | 166.7% | 250.0% | 500.0% |
| 4000万円~ | 55% | 46.2万円 | 183.3% | 275.0% | 550.0% |
(赤字は100%以上になる(翌年に拠出額が全額返ってくる)ライン)
例えば、最低のケース(借入限度額が7割、かつ税率が15%(所得税5%+住民税10%)でも、月7万円(年84万円)を拠出すると、実質の手出しの 84 × 0.3 = 25.2万円 に対してリターン(節税額)は 84 × 0.15 = 12.6万円 で、利回りは 12.6 / 25.2 × 100 = 50% になります。
しかも、この手出しの25.2万円も、最後に解約した時に返ってくるため実質、元本保証です。
(厳密には、一般貸付の利率(1.5%)と掛金の予定利率(1.0%)との差額は発生しますが)
さらに、借入限度額の割合(拠出期間が長いほど増える)が増えたり、税率が上がると利回りが100%を超えます(実質の拠出額<節税額になります)。
もちろん、(運用結果次第で)やらない方が良かった、となる可能性が無いのもそうですが、(老後まで待たなくても)翌年にはお金がもらえるのがNISAやiDeCoと決定的に違う点です。
今使うか、(増やして)遠い将来に使うか、みたいな選択も必要ないのね
経営セーフティ共済はもっとすごい!?
この貸付制度、小規模企業共済だけでなく経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)にもあります。
その名の通り、取引先が倒産して売掛金等の回収が困難になったとき用(連鎖倒産を防止するため)の制度なのですが、
このときの借入(共済金貸付(掛金の10倍まで借入可、ただし借入額の1/10の掛金は消滅))とは別に、取引先が倒産していなくても借入ができる制度(一時貸付金制度)があります。
(借入限度額は小規模企業共済(掛金総額の7~9割)と同程度で、現在の利率は年0.9%)
| 掛金の納付月数 | 一時貸付金の借入限度額 |
|---|---|
| 1か月~11か月 | 0円 (利用できません) |
| 12か月~23か月 | 掛金総額 × 75% × 95% |
| 24か月~29か月 | 掛金総額 × 80% × 95% |
| 30か月~35か月 | 掛金総額 × 85% × 95% |
| 36か月~39か月 | 掛金総額 × 90% × 95% |
| 40か月以上 | 掛金総額 × 95% × 95% |
| 掛金総額が800万円の場合 | 掛金総額 × 100% × 95% (760万円) |
そして、こちらも小規模企業共済と同じく、増額借換があります。
(つまり毎年、これを行えば上記の金額分まで、翌年の掛金に充てられます)
経営セーフティ共済のメリット・デメリット
ただし、小規模企業共済と経営セーフティ共済には、大きな違いがあります。
この違いから、経営セーフティ共済は毎年の所得に大きな波がある人が、所得が多い年に拠出し、少ない(もしくは赤字の)年に受け取るのがセオリー(所得が安定している人には原則、メリット無し)なのですが、借入を併用すると神制度に大化けします。
その理由は、経営セーフティ共済は「所得控除」ではなく「経費」なので、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料も削減でき、
さらに、掛金が運用されない代わりに借入の利率が年0.9%(小規模企業共済は1.5%)なので、運用面ではほとんど差が無くなるからです。

たとえば、大阪市在住で40~64歳の人がいる世帯の場合、年間の掛金に、上記の所得割の合計(9.30% + 3.02% + 2.56% = 14.88%)をかけた金額が浮きます(もらえるのと同じです)。
ただし、国民健康保険料の所得割には各区分ごとに賦課限度額(上限)が設定されおり、2025年度は医療分で65万円(65 ÷ 0.093 = 約698.9万円)なので、課税所得で700万円くらいから、このメリットは無くなります。
所得が低いほどメリットが多い
| 課税所得 | 税率 | 国民健康保険の所得割 | 節税+国保料削減効果 月7万円の場合 | 利回り 12~23か月 (24.2万円) | 利回り 30~35か月 (16.2万円) | 利回り 40か月以上 (8.2万円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ~195万円 | 15% | 14.88% | 25.1万円 | 103.9% | 155.2% | 306.5% |
| ~330万円 | 20% | 14.88% | 29.3万円 | 121.3% | 181.2% | 357.7% |
| ~695万円 | 30% | 14.88% | 37.7万円 | 156.1% | 233.1% | 460.3% |
| ~900万円 | 33% | 0.00% | 27.7万円 | 114.8% | 171.4% | 338.5% |
| ~1800万円 | 43% | 0.00% | 36.1万円 | 149.6% | 223.4% | 441.0% |
| ~4000万円 | 50% | 0.00% | 42.0万円 | 173.9% | 259.7% | 512.8% |
| 4000万円~ | 55% | 0.00% | 46.2万円 | 191.3% | 285.7% | 564.1% |
国民健康保険料は2025年度の大阪市(40~64歳の人がいる世帯)で計算
節税効果に加えて、社会保険料(国民健康保険料)の削減効果も加味して計算するとこのようになり、小規模企業共済(先ほどの表)よりも(特に所得が低い人にとっては)利回りが大きくなります。
しかも、税率が15%、かつ掛金の納付月数が12~23カ月という最低条件でも、利回りが100%を超えています(払った分以上のお金が翌年に返ってきます)。
もはや、デメリットは1年目の掛金くらい、と言っても良いでしょう。
(これも、(借入利息と税金が引かれて)全額ではないものの、解約時に返ってきます)
所得が低い人ほど、(相対的に)社会保険料の負担が大きいからね
小規模企業共済・経営セーフティ共済どちらがお得か
では、トータルで小規模企業共済(+借入)と経営セーフティ共済(+借入)のどちらの方がお得か、なのですが、これは人によって変わります。
原則は先ほどの、小規模企業共済の表と、経営セーフティ共済の表を見比べて、利回りが高いほうが良いのですが、あまり差が無い場合は小規模企業共済の方が良いと思います。
具体的には、国民健康保険料が上限に達している(課税所得がおおよそ700万円以上の)場合、またはマイクロ法人(と個人事業主の二刀流)で社会保険料を最小化している場合などです。
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その理由は、受け取り時の課税が小規模企業共済の方が有利だからです。
同じ一括受取でも、小規模企業共済だと退職所得控除額を引いた後に1/2してから税金の計算になりますし、(会社の退職金などとは違って)受け取るタイミングは自分で選べるので(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んでいる、または廃業届を出せば元本割れ無し)、
iDeCoと併用の場合でも、60歳でiDeCoを受け取り、70歳で小規模企業共済を受け取る(10年ルールで重複期間の退職所得控除額を再度使う)こともできます。
(たとえ、10年ルールが15年ルールに改悪されても、75歳で受け取れば良いです)
また、受け取り時は(借入が無いものとして)税金を計算したあとに返済になるため、単純に(事業が赤字などではなく)引退後に受け取った場合、差し引きマイナスになる(手出しが発生する)可能性が高いです。
(たとえば、課税所得が700万円の場合、所得税+住民税は167.4万円(23.9%)になるため、「掛金総額ー借入額」より大きくなると思います)
小規模企業共済を優先した方が良い
上記以外の場合(課税所得700万円以下で国民健康保険に加入など)は経営セーフティ共済の方がトータルでお得になる可能性が高い上、掛金の上限も月20万円(年240万円)と高いため、こちらだけで良いように見えますが、掛金総額の上限(800万円)があることに要注意です。
このあたり、NISAとiDeCoの関係にもよく似ています。
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しかも、この掛金総額の上限(800万円)まで埋まってしまうと、解約するまでの間、(掛金の運用は無いため)年0.9%とはいえ借入の利息だけがかかり続けてしまうことになりますし、
(経営セーフティ共済は解約後も再加入が可能ですが)2024年10月から解約後2年間の掛金は経費計上ができないように改悪され、使い勝手が悪くなってしまいました。
経営セーフティ共済の注意点
また、経営セーフティ共済にはもう1つ、注意点があります。
それは、借入金の使途が、小規模企業共済は「事業に必要な運転資金、その他事業に関連する資金、または生活資金」と幅広いのに対し、経営セーフティ共済は「事業資金(運転資金、設備資金)」に限定されている、ということです。
もちろん、お金に色はないので、本来売上などから出すはずの事業資金に借入を充てて、売上を翌年の掛金に回す、でも良いのですが、ネットビジネスなどで事業資金があまりかからない場合、難しいかも知れません。
しかし、小規模企業共済の方が一般的に加入は難しいです(会社員の副業での加入は、実態に関わらずNGとなっています)。
会社員が使えるのはサイドFIREしてからになりそうね
万人におススメなのはiDeCo
このように、小規模企業共済(+借入)と、経営セーフティ共済(+借入)は非常に優秀なのですが、残念ながら使える人は限られています。
これに対して、iDeCoは誰でも加入ができ、(非課税の人以外は)ほぼお得になる制度です。
(上記の借入を行っていても、同時進行でやった方が良いです)
今は掛金の上限で会社員(2.3万円)よりも個人事業主(6.8万円)のほうが有利ですが、これも改正後は会社員でも6.2万円(個人事業主は7.5万円)とあまり差が無くなります。
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掛金の上限アップ以外にも、iDeCoはどんどん便利になっていきますから、まだの方は早めに始めるのをおススメします。
お得な制度は積極的に使っていきたいね
それでは皆様、よきフィットネスライフを〜🏃♀️


