こんにちは〜🌤️おりおりです🙋♀️
「ふるさと納税に課税」の内容
今年の5月、今後のふるさと納税を大きく左右する判決が確定しました。
それは、ふるさと納税の返礼品にかかる税金の話です。
と言っても、返礼品に税金がかかるかどうか、の話ではなく(税金がかかるのは確定事項)、その金額について、納税者自身が調査して確定申告せよ(寄付金額の3割、はNG)というものです。
判決までの流れ
原告の女性は、2018年までの2年間に全国の延べ約110自治体に対し、ふるさと納税制度を使い計490件(総額約660万円)の寄付をして、返礼品を受け取りましたが、確定申告の際にこれを含めていませんでした(給与所得などは申告済)。
そこで、税務署はこの女性に対し、この返礼品490件の価値は計約280万円と算出し、その分の所得税額40万円あまりを増やす処分を通知しました。
女性はこれに不服を申し立てましたが、折り合いがつかずに税務当局を提訴しました。
その内容は、返礼品の価値は近くの小売価格の最安値かそれに近い金額によって判断するべきというもので、確かに約660万円の寄付に対しての返礼品の価値が約280万円というのは、少し高すぎる気もします。
しかし、横浜地裁の判決は「納税者は各自治体に対し、調達価格を確認するなど適正な時価を把握したうえで申告する必要がある」というもので、東京高裁も判決を支持して控訴を棄却、そして最高裁も上告を棄却し、判決が確定しました。
さらに、驚くことに3割ルール(総務省が2019年6月に定めた、寄付金額に対する返礼品の金額の割合は3割以下」という通知)を超える価格が認められる前例ができたのです。
今回の例だと、その割合は 280 / 660 × 100 = 約42.42% になります。
返礼品は一時所得
返礼品の課税関係については、こちらのように「一時所得」として、所得税(および復興特別所得税)と住民税の対象になります。
A市では、市外に在住する者から1万円以上の寄附を受けた場合、この寄附に対する謝礼として、市の特産品(3,000円程度)を送ることとし、総務省からふるさと納税の対象となる団体の指定を受けています。
この場合の寄附者が受ける経済的利益について、課税関係は生じますか。寄附者が特産品を受けた場合の経済的利益は、一時所得に該当します。なお、その年中にこの特産品(3,000円程度)に係る一時所得のほかに一時所得に該当するものがないときには、課税関係は生じません。
(中略)
なお、一時所得の金額は次のように計算します。(注)
「ふるさと納税」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係|国税庁
1 その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限られます。
2 AからBを控除した残額が50万円に満たない場合には、その残額となります。
ふるさと納税の寄付は上記の「B」に当てはまらないため(自分が住んでいる自治体に納税する代わりに他に納税しただけなので)、単純に返礼品の価値の合計が年間50万円以上なら、超えた分に対して税金が掛かる、ということになります。

対象者が少ない上に、そんなに稼いでる人は税理士を雇っているケースが多いから、あまり注目されていないのね
返礼品に税金がかかる条件
しかし、返礼品に税金が掛かる条件は、これだけではありません。
副業所得20万円以下ルール
会社員(年収2,000万円以下)や年金受給者など、確定申告が不要な(源泉徴収で完結する)人は、これら以外の所得が年間20万円以下なら確定申告は不要(結果的に所得税は掛からない)というルール(20万円以下ルール)があります。
給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人(確定申告をすれば税金が還付される人は除きます。)は、確定申告をしなければなりません。
1 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
3 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
(注) 給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
一般的な給与所得者の方については、その給与以外の所得金額が年間20万円を超えない場合には、確定申告をする必要がないこととされており、一時所得については、50万円を控除した残額に2分の1を乗じた金額によって所得税額を計算することとされていますので、他の一時所得とされる所得との合計額が90万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません。
No.1490 一時所得 Q&A|国税庁
つまり、会社員なら先ほどの一時所得(50万円まで非課税)と合わせて返礼品の価値が90万円までは確定申告不要、となります。
ですが、先ほどの例(寄付金額に対する返礼品の金額の割合が約42%)でも、寄付金額を逆算すると 90 / 0.42 = 約214.3万円 となり、そんなに寄付できる(控除限度額が高い)人だと年収2,000万円以上の場合(どちらにせよ確定申告が必要)がほとんどだと思います。
ちなみに、この20万円ルールで掛からなくなるのは所得税だけで、住民税はかかる(厳密には住民税申告が必要になる)のですが、実際には見逃されているケースがほとんどだと思います(でなければ、フリマサイトで不用品を売却(雑所得)なども対象になるため)。
他に一時所得がある場合
しかし、現実的に一番問題になるのが、他にも一時所得があって、合計で50万円(90万円)を超えるケースです。
一時所得には、次のようなものがあります。
(1)懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
No.1490 一時所得|国税庁
(2)競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。)
(3)生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(4)法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます。)
(5)遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
(6)資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの
この中で要注意なのが競馬や競輪の払戻金で、原則そのお金を得るために掛かった費用は関係ありません(経費になるのはその馬券の購入費のみで、外れ馬券は対象外)。
つまり、年間で200万円を競馬や競輪などにつぎ込み、払戻金の合計が100万円(トータルで100万円の負け)だったとしても、100 - 50 = 50万円 の一時所得となり、税金が掛かります。
(下記①は自動購入システムまで組んでいたケースで、趣味レベルだとほぼ②だと思います)
競馬の馬券の払戻金が一時所得と雑所得のいずれに該当するか、外れ馬券の購入費用が必要経費として控除できるか、が争われていた裁判において、
① 最高裁平成29年12月15日判決は、本件の競馬の馬券の払戻金については、馬券購入の態様や利益発生の状況等から雑所得に該当し、外れ馬券の購入費用は必要経費に該当する
② 東京高裁平成28年9月29日判決(最高裁平成29年12月20日上告棄却)は、本件の競馬の馬券の払戻金については、馬券購入の態様や利益発生の状況等から一時所得に該当し、外れ馬券の購入費用は必要経費に該当しないと判断しました。
競馬の馬券の払戻金に係る課税について|国税庁
一時所得は、所得金額の計算上、特別控除額50万円を控除することとされており、他の一時所得とされる所得との合計額が年間50万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません。
No.1490 一時所得 Q&A|国税庁
さらに、これが問題なのは競馬や競輪の払戻金(トータルの勝ち負けは無関係)の合計が年間で50万円(会社員は90万円)以上の場合、(控除額を使い切ってしまうので)ふるさと納税の返礼品の価値が数万円や数千円だとしても税金が掛かってしまうということです。
競馬や競輪が、ふるさと納税にまで影響するんだね

ふるさと納税はどれだけお得か
ふるさとでお得になる金額は、「(寄付金額 - 2,000円)× 0.3 」と言われています。
これは、(寄付金額 - 2,000円)が所得税と住民税から控除され、前述のように返礼品の金額は寄付金額の3割以下と定められているからです。

ふるさと納税は税金の前払い
しかし、実際はこれだけではありません(3割とは限らない、という意味ではありません)。
所得税からの還付金は、ふるさと納税を行った翌年の4月〜5月ごろに指定した口座へ自動的に振り込まれ、住民税からの控除額は6月から(会社員は6月~翌5月までの年12回、個人事業主は6月・8月・10月・翌1月の年4回)適用になります。
つまり、税金を前払いして、その対価として返礼品を受け取っているのです。
であるならば、「前払い」のデメリットを数値化し、「お得になる金額」と合わせて総合的に判断する必要があります。
前払いのデメリット=運用利回り
では、前払いのデメリットとは何か、と言うと運用機会の損失です。
例えば、会社員の人が12月に5万円のふるさと納税を行いワンストップ特例制度を利用すると、実質的に戻ってくるのは半年後~1年半後なので、もしふるさと納税をしなかったら、そのお金は平均1年間は運用に回せた、ということになります。
ワンストップ特例制度 | 確定申告 |
---|---|
住民税から全額控除(減額)![]() | 所得税からの還付と、住民税からの控除![]() |
そして、その運用利回りが年率10%だった場合、5万円 × 0.1 = 5,000円 の利益が出ることになります。
つまり、「本当の」ふるさと納税でお得になる金額は(50,000 - 2,000)× 0.3 = 14,400円 ではなく、そこから 5,000円 を引いた 9,400円 になります。
ここでもし、返礼品に税金が発生した場合、税率(所得税+住民税)が30%(課税所得が330~695万円)だとしたら 14,400 × 0.7 - 5,000 = 5,080円 まで下がり、旨味はだいぶ少なくなってしまいます。
ふるさと納税の損益分岐点
では、ふるさと納税の金額と利回りを変えて、同じように計算するとどうなるでしょうか。
運用利回り(年率) | 1万円 | 3万円 | 5万円 |
---|---|---|---|
5% | 1,900円 | 6,900円 | 11,900円 |
10% | 1,400円 | 5,400円 | 9,400円 |
20% | 400円 | 2,400円 | 4,400円 |
30% | -600円 | -600円 | -600円 |
運用利回り(年率) | 1万円 | 3万円 | 5万円 |
---|---|---|---|
5% | 1,180円 | 4,380円 | 7,580円 |
10% | 680円 | 2,880円 | 5,080円 |
20% | -320円 | -120円 | 80円 |
30% | -13,20円 | -3,120円 | -4,920円 |
つまり、ふるさと納税に課税が無ければ運用利回りが30%弱、あれば20%前後が損益分岐点となります(利回りがそれ以上なら、ふるさと納税なんてしない方が良かった、となります)。
課税があろうが無かろうが、ふるさと納税をしない、という選択は無しだね

ふるさと納税で大事なこと
というわけで、ふるさと納税は今回の判例で高額納税者にとっては少し面倒になりましたが、一般的な金額で(競馬や競輪など)他の一時所得が無ければ特に影響は無さそうです。
依然、神制度であることに変わりはないので、積極的に利用していきましょう。
前述のとおり、税金の前払いとは言え12月に行えば元本保証で年率20~30%の利回りで運用が出来るようなものです。
ふるさと納税のタイミング
しかし、ふるさと納税は2025年10月からポイントの付与が廃止されることになりました。
寄附に伴いポイント等の付与を行う者を通じた募集を禁止すること。(募集適正基準の改正)【令和7年10月1日から適用】
総務省|報道資料|ふるさと納税の指定基準の見直し等
これを考えると早くやった方が良いのですが、遅ければ遅い方が前払いの期間は短くなるため双方のメリットが取れる9月がベストになりそうです。
ただし、急な怪我や病気などによる収入の減少や医療費(控除)の増加を考えると、今年分を全て9月にやるというよりは、9月の時点では少なくともこのくらいの限度額になるであろう、という金額だけやっておき、12月に(限度額に達していなければ)残りを行う形が無難だと思います。
限度額の求め方についてはこちらで解説しています。
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ふるさと納税の限度額~ギリギリを狙うと損をする!?~
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返礼品選び
実は、タイミング以上に大事なのがどんな返礼品を選ぶか、です。
これで失敗すると最悪、2000円多く払って税金を前払いしているだけ、になってしまいます。
寄付金額の3割の市場価値があるとしても、自分にとって価値がある(必要なもの)でなければ意味がありません。
それを知るには、ふるさと納税が無かったとしても買うか?と自問してみてください。
また、3割を大きく下回る値段でAmazonなどで売られていないか、のリサーチも重要です。
(実店舗だと行く手間や時間もあるため、少々低くても良いですが)
2025年10月からポイントの付与が廃止されると、この返礼品の選定はより重要になってくると思います。
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ふるさと納税について~何を選べばお得か?徹底解説~
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ふるさと納税サイト選び
また、返礼品選びほどではないですが、2025年9月までは特にふるさと納税サイトをどこにするか、も重要です。
これについては、自分の経済圏に合ったもの(よく使うポイントが貰えるもの)にするのが良いと思いますが、特にこだわりが無ければ楽天ふるさと納税をおススメしています。
理由は、ふるさと納税をやる日だけ調整すればかなりのポイントが得られ、ありとあらゆる物が揃っている楽天市場でポイントが使えるからです。
また、返礼品選びが面倒なら、1000円マラソン(1000円ぴったりの寄付(大抵は返礼品なし)で買いまわりショップ数を稼ぐ)でポイントだけを得る、という方法もあります。
いずれにせよ、ふるさと納税をやる・やらないの差が一番大きいですから、今回のような悪いニュースがあっても動じずに、お得なものは利用していきましょう。

「〇〇〇はオワコン」みたいな情報に騙されないようにね
それでは皆様、よきフィットネスライフを〜🏃♀️